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オンラインニュースレター:2014年8月号

2014年8月号



科学と想像力 −宮古海岸で考えたこと− (e01)

高木 淳一(大阪大学蛋白質研究所)

 本領域の第3回全体班会議に加え、このたびサマースクールに参加させていただきました。“シニア”という位置づけで参加することになったことに少なからぬ葛藤(?)を抱えながら、宮古海岸の断崖絶壁が目の前に迫る国民休暇村で、二泊三日の有意義な時間を過ごさせていただきました。学部学生さんから若手PIまで活気のある人々と、夜遅くまでいろいろなことを話し、笑い、飲んで、あっという間の3日間でした。
唐突ですが、私はいつも「想像力」というものが、人間が磨かねばならない最大の能力だと思っています。自分以外の他人や他の物体の身になって、自分が体験したことの無い、あるいは体験し得ない事象もありありと思い描く能力で、特に科学者には大事だと思っています。発表をするときは聴く人の身になって内容を考えるなどというのは基本だし、細胞を扱うときは自分が細胞だと思って、どんな風に扱われたいか考える、タンパク質を精製するときはタンパク質の身になって試料をあつかうことが、実験がうまくいくコツだと思っています(ただしあまりマウスの身になって考えるのはやめた方が良いかもしれませんが・・・)。
ですから自分は少なくとも人並み以上には想像力をつねに働かせているという自負もあるわけですが、今回、津波で大きく被災した宮古海岸を訪れて、いまさらながら「百聞は一見にしかず」という感慨を新たにしました。3年も経つのに、まだブルドーザーがコンスタントに稼働している状態であること、湾を襲った16mの津波の高さは、地面が突然深い海底になったも同然であること、東京オリンピックの開催決定で建設資材の調達が早くも遅れはじめ、東北の人たちが複雑な感情を抱いていること、などなど。我々の使うリサーチマネーは、東北復興の予算と地続きであることも、ますます想像力を働かせて実感しなければならないと感じます。しかし、いや、だからこそ我々基礎研究者が何をなすべきなのか、軽薄な論理で科学が評価・批判される時代に、津波にもびくともしなかった岸壁のような揺るがないサイエンスを打ち立てるにはどうしたらよいのかを、ますます知恵を絞って考えなければならないのだと思います。
と、大上段に振りかぶってはみても、日々できることは限られます。今回久しぶりに、日常の雑事からisolateされた環境で大勢の若い人たちと身近に過ごし、自分が学生の頃と同じように皆さんがひたすら研究(実験)を楽しんで居る様子をうかがい知ることができたことで、楽観的になることもできました。ああ今も昔も我々はこうやってサイエンスをつないできたんだなあと、今更ながら平凡な感想を持った次第です。「緊張感を持ちながらもゆったりと」をキーワードに、領域研究後半を乗り切っていきたいですね。

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第3回班会議に出席して:日常と非日常、そして発生学と免疫学 (e02)

高田 慎治(自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンター/基礎生物学研究所)

今年度の班会議は7月16、17日の2日間、岩手県の花巻温泉郷にあるホテル千秋閣にて行われました。班会議やシンポジウムをどのような場所で行うかについては常々議論のあるところですが、人間誰しも非日常の世界に身を置けば、新たなアイデアが湧き出て来るとも言われます。そんな期待を胸に、久しぶりに夏の岩手県へと向かいました。
ホテルはとても静かなところにあり、班会議の合間には周囲の豊かな自然を堪能することができました。特に、片貝先生に教えられて見に行ったホテルの近傍の滝(釜淵の滝)はなかなかのものでした。このような素晴らしい環境の中で素晴らしいアイデアが湯水のごとく湧き出して来たかというと、私の場合、現実はさほど甘くも単純でもなかったようです。それでも日常の世界にいる時よりも幾分解放的になったせいか、さまざまな方々と楽しく議論ができ、意義深い非日常の体験になりました。
さて、私の研究のバックグラウンドは発生学です。専門分野という言い方もされますが、そのような言葉の使い過ぎには少しばかり抵抗を感じることがあります。たしかに専門分野が何々であると表明することは、自分の研究の立ち位置を他人にわかりやすく伝えるという点でも有効ですが、その反面、専門分野という区分けに囚われすぎると、 大事な何かを見落としてしまうことになりはしないかと危惧するからです。発生学や免疫学といった分野の垣根を無意識に設けてしまうことによって、発想や実験の自由度を自ら制限することに繋がってはいないか、という思いは時折頭をよぎります。
そんな折、ご縁があって「免疫四次元空間」に発生学サイドから参加させていただくことになりました。このことをHPなどで知った発生屋の仲間からは、「いったいどうしちゃったの。専門を変えるわけ?」などとよく突っ込まれています。私としては、最近の研究テーマである「細胞外微小環境でのWntタンパク質の時空間的局在」という問題を扱う系として、胸腺におけるストローマ細胞とT細胞の相互作用はベストのものの一つであるとごくシンプルに捉えているつもりです。しかしそうは言うものの、自分たちだけで胸腺の解析することはかなり厳しいというのもまた事実です。発生学という私にとっての日常的世界の延長線上に免疫学との現実的な接点を持つためには、日常と非日常を上手に結びつけるしかけが必要であり、私の場合には班員の方々からサポートをいただけることが大きいのだと実感しています。
班会議で伺う多くの皆さんの研究とはこれまであまり接する機会がなかったため、私にとっての班会議は「非日常」的な気づきを得る場でもあります。例えば、発生学では研究者ごとにさまざまな細胞や組織・器官を扱うのに対して、免疫学を研究される方々は扱われる対象が主に免疫器官とB細胞、T細胞に特化されています。これだけ多くの研究者が特定の器官と細胞に集中しても、研究のテーマが次々と出て来るところは門外漢には大きな驚きですが、それと同時に、研究対象についての共通理解があるせいか、議論がいきなり本質的な深いところから始まるなと感じることが度々あり、真摯なやりとりにはたびたび感動を覚えます。一方、免疫細胞の分化や幹細胞の維持、はたまた細胞のシートを免疫細胞がどのようにすり抜けるのかといったような細胞の動態には、発生学や細胞生物学にとっても大事な問題が数多く含まれます。そのような問題においては、 「日常か非日常か」「専門分野か否か」というこだわりはあまり大きな意味を持ち得ないのだということもまた実感できました。
花巻温泉で感じた非日常の開放感を日常の研究の場に上手に結びつけられるように、そして私にとって非日常の系であった胸腺微小環境との出会いが、発生学や免疫学といった区分けを超えた何かに結実するように願いつつ、これからも研究を進めて参りたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

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「免疫四次元空間ダイナミクス」第3回班会議に出席して (e03)

福井 宣規(九州大学生体防御医学研究所)

本領域は、血液系細胞を対象とした従来の免疫学から視点を移し、リンパ器官を主とする「免疫の場」とそれらのネットワークからなる「免疫空間」の本態を解明することを目的としている。領域代表の高浜先生より、このコンセプトを初めて伺った際、その斬新さに感銘すると共に、きっと「新学術」の名にふさわしい新しい研究領域を立ち上げることができるに違いないと感じたものである。あれから2年。折り返し地点を迎えて参加した第3回班会議において、その思いは益々強くなった。骨髄ニッチの形成や胸線上皮細胞の機能発現に重要な分子が同定され、「免疫の場」の実体を分子レベルで議論出来る日もそんなに遠くはないであろう。また、若手研究者の発表も素晴らしく、この領域の発展を担ってくれる世代が確実に育っていることも頼もしく感じられた。一方私はと言うと、三次元微小環境下での免疫細胞の動態制御機構の解明に取り組んでいるが、「免疫空間連携」の本質に迫ることができる様に、もっともっと頑張らないといけないなと反省した次第である。残念ながら翌日、あるプロジェクト研究の審査委員を仰せつかっていたことから、岩手での滞在は11時から18時までで、東北の今にふれる時間はなかったが、東京に向かう新幹線の中で食べたホタテ弁当は秀逸であった。

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第3回班会議に出席して (e04)

石川 文彦(理化学研究所 統合生命医科学研究センター)

花巻から鶴見(横浜市鶴見区)にもどって、第3回班会議での興奮がさめないうちに、ニュースレターへの投稿依頼が来ました。
班会議では、特別講演として、石井先生がご紹介された “imagingにてひも解く免疫のダイナミクス” に圧倒され、「schemeで説明する教科書でなく、実際のeventで伝える教科書を作って、免疫学を学生に伝える」という思いにも心打たれました。特別講演の前後に組まれた班員の発表では、それぞれの進捗もすばらしく、河本先生の質疑を中心に、いつものごとく盛り上がりました。次第に熱を帯びてきて、総括班・計画班・公募班、いろいろな方が質問・コメントし、発表者も、よい緊張感のなか、今後の方針を決定するうえでのヒントを得て、サマースクールに出発されたものと思います。
総括班の話し合いでは、免疫四次元空間のみならず、免疫特定領域から新学術領域へのtransition、免疫に関わるほかの新学術領域の立ち上げなど、さまざまなことが議論されました。清野先生は、免疫特定や新学術領域という班会議の、若手が成長する場としての大切な位置づけについて言及されました。免疫特定領域では、理研に赴任したばかりであった私も、免疫学のさまざまな研究、捉え方を学ぶとともに、自身の研究発表に対して多くのアドバイスをいただきました。
思い返すと、渡邊武先生と河本宏先生が企画された第1回 RCAI ワークショップ (2005年2月 http://www.rcai.riken.go.jp/workshop/050218/pdf/wsposter-1.pdf) にて発表させていただいたことが、それまで免疫学と縁のなかった私が、この世界で仕事をさせていただくきっかけとなりました。ワークショップでご一緒した方の何名かは、この新学術領域「免疫四次元空間」でもご一緒です。10年という歳月が経ようとしているなか、免疫を教えてくださった先輩方に感謝し、同世代の方々と切磋琢磨できたことに感慨深く思います。免疫学という世界で、幾度も、大切な機会をいただいては、分からないことばかりで、勉強して臨み、その場でさまざまな指摘をされては勉強して、という繰り返しでした。それこそが今に至る大切な糧となったように思います。
普段、振り返る時間などありませんが、上記のような機会をいただいた方々への感謝の思いをあらためて認識した班会議でした。そして、中継所としても名高い鶴見にて、次の世代へ良い形で襷を繋げるべく、ゴールまであと何キロかもわからないコースではありますが、懸命に走りたいと思います。

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班会議・サマースクールに参加して (e05)

戸村 道夫(京都大学医学研究科)

新学術領域に参加できることの魅力は、先輩の諸先生方並びに若手研究者との縦のつながりと、自分と似た環境にいる研究者との横の交流を広げ深くできることと、班会議・サマースクールに参加し改めて実感しました。
班会議終了からほぼ半日かけての移動にも関わらず、シニアから若手までが、それぞれの立場で朝から、本当に夜中まで元気に語り合いました。
宮坂先生、高浜先生、高木先生によるシニアトークは、研究の公正性と自分を追い込んでの実践トークに、身を乗り出して聞き入りました。
若手から中堅までの全員が話す指定発言は、とても良い試みであったと思います。みなそれぞれが当然持っているけど、日常では相談できなかったり、相談できたとしてもなかなか自分が納得できる答えを得られなかったり。そのような時に研究を進めて行く上で、あるいは研究者として生きていくために大切なことを語り合えたと思います。全ての世代に於いて共通する大切な事項は、ともかくがんばって進む、ということを共感できたことは私自身にとっても有意義でした。
日常を離れた自然の中で、共に過ごす時間は、お互いの連帯感を深めると密度の高い3日間でした。
来年度の開催に期待致します。
最後に企画・運営をして下さった、高浜先生をはじめ徳島大学のスタッフのみなさま、ありがとうございました。
改めて感謝致します。

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岩手での班会議とサマースクールに参加して (e06)

大久保 直(北里大学医学部・実験動物学)

夏の岩手は実に十数年ぶりと久々でした。新幹線とはいえ意外と往路は遠く感じました。おそらくそれは、この1年の研究の進展具合?と成果発表への緊張感からくるものだったのかもしれません。案の定、班会議はかなりのプレッシャーのなかでの発表となりました。私の進めている研究テーマは、胸腺原基の形成の場である咽頭弓の分節化メカニズムを理解することです。多くの班員とは常日頃観察している細胞や組織は異なりますが、様々なアプローチで「免疫の場」を研究されている演者のみなさんの成果発表を聞き、非常に勉強になりました。
続いて、花巻から宮古へ移動して行われたサマースクールは、若手の研究者や大学院生を中心に、自己紹介を兼ねた最新のデータについてのディスカッション、そしてシニア研究者との交流の場になりました。我々班員は、これまで神戸、京都、徳島、岩手を移動しながら、散っては集まり、相互に活性化し合い成長分化していく、まるでリンパ球のような存在で、次はどこへ向かいどんな刺激を受けるのかとても楽しみです。
最終日は、津波で甚大な被害を受け、まだ復興途上の田老地区で防災への取り組みを見学する機会を得ました。テレビ報道で見る以上の衝撃を受け、後世へその思いや教訓を継承していくことが大事だと感じました。ただ、過去の大津波の時と大きく異なる点は、記憶の口伝ではなく、多くのライブ映像や詳細なデータが記録できたということだと思います。それを将来へどう活かすかは私たち次第だなぁと思いながら、東京行きのはやぶさに乗り込み、岩手を後にしました。最後になりましたが、運営を担われた高濱研の方々に深く感謝いたします。

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サマースクールに参加できなかったものからのかなお詫びと注意 (e07)

後飯塚 僚(東京理科大学)

昨年の班会議は京都の芝蘭会館、そして、その翌日の昼過ぎ、徳島宍喰温泉で開催されるサマースクールに向けて、学生と同行される班員の先生達が乗り込んだ、バスが出かけていくところを見送った記憶がある。今年の班会議は岩手花巻、そして、2回目になるサマースクールは岩手の海岸沿いにある陸中宮古。第1回目の時は、うちの研究室からは、修士1年生の中原くん、学部4年の野津さん、それから、助教の小田くん、その3人が参加させてもらったが、そんなところまで、この、どうしようもない指導者の真似をしなくていいのに、なんと、ひとりは京都に遅刻して、徳島空港でピックアップしてもらって、目的地に着いたようである。今回は、一緒に行きたい気持ちは山々だったが、日程が研究科の大学院入試日と重なっており、已む無く断念ということで、助教と学部4年生の笠原くんの2名に参加してもらうことになった。
私の研究室では、どうしても都合が合わない用事がない限りは、サマースクールに参加してもらうようにしている。なぜかというと、班会議もそうだが、特に、サマースクールに参加するということは、若い学生にとって自分の視野を広げ、横の繋がりを作る上で、すごくいい機会じゃないかと思っているからである。同じ領域ということで、テーマも近いところで研究を行っている同年代の学生やポスドクが、合宿形式で交流するというのは、人のやっていることを聞く、自分のやっていることを説明する、ということだけでなく、身近で人間と人間としての付き合いができるということで、それに自覚的になって、積極的に参加すれば、するほど、自分の財産として残っていくものだ、ということが、後々、わかるはずである。「サヨナラダケガ人生ダ」、映画『幕末太陽伝』にも出て来る、井吹鱒二の有名な科白ではあるが、「出会いがなければサヨナラもない」、とすれば、身も蓋もない滅茶苦茶な三段論法だが、「出会いだけが人生だ」、ということになる。
おかげでというか、偶然だが、サマースクールに参加していない、この私にもおこぼれがあって、それは、昨年の宍喰温泉での海岸散策の時に撮影された学生達の写真を、この1年ほど、殆どの発表の最後のスライドとして使っていた。ところが、6th Synthetic Immunology Workshopの時だったか、「僕の写真出て来てびっくりしましたよ」、と大阪大の梅本英司先生から、挨拶されて、初めて気がついた。確かに、写真にはうちの学生以外に2人、見知らぬ顔が映っていて、みんな若々しいので、学生だろう、くらいにしか思ってなかった。ということで、あちこちで、上半身裸の梅本先生の勇姿を、無断で、晒し続けていたことになる。お許しください。そして、また似たようなことがあるかもしれないので、先に断っておきますが、今年のサマースクールで、うちの学生と偶然一緒に、写真に写りこんでしまった先生は、これから1年ほど、講演や発表の際に、写真が使用されている可能性がありますので、気がつかれた場合は、お声をおかけくださいませ。一席設けさせていただきます。

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「免疫四次元空間」サマースクール (e08)

和田 はるか(北海道大学 遺伝子病制御研究所)

サマースクールは、研究室に入って間もない学部学生さんから研究熱心なテクニカルスタッフの方、シニアの先生方まで40名近いメンバーが参加しました。寝食を共にしながら、椛島先生の特別講演、シニアトーク、研究発表や討論会を通じて交流を深めました。中でも連夜開催された討論会は印象深いものとなりました(初日の討論会では議論が白熱するあまり、老若男女(?)参加者全員がお風呂に入りそびれるという伝説(!)も生まれました)。討論会は、今回が初の試みとなる「指定発言」方式により行われました。発言内容は自由でしたが、学生さんの多くの話題は研究生活を送る上での悩みについてでした。それは真剣に研究生活を送るからこそ生じる悩みで、それに対して先輩にあたる先生方が、やはり真剣に真摯にお答えをおっしゃっておられたお姿が印象的でした。また複数の参加者の相談内容に「どのようにしたら先生方のようなすばらしい研究成果をあげられるのでしょうか?」というものがありました。既にたくさんのすばらしい成果をご発表されているシニアの先生方は共通して「何をするかよりも何をしないかを見極め、集中することが大事である」とおっしゃっておられたことが大変印象的で、感銘を受けました。
私は幸運にも、班会議・サマースクール共に2回連続で参加させていただけました。論文やインターネット上(二次元)で存じ上げていた方と実際に会場でお会いし(三次元)、さらに時を隔てて(四次元)再会することで、より強いネットワーク形成ができたように感じています。この「免疫四次元空間」で得られたつながりを生かして、より研究を発展させ、成果につなげていけたらと思っております。
最後になりましたが、毎回このようなすばらしい班会議やサマースクールの開催準備、運営にあたってくださっている高浜研究室の皆様および関係者の皆様に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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緊張と興奮の第3回班会議 (e09)

新田 剛(東京大学 大学院医学系研究科)

本年度より東京大学に異動しました新田 剛です。岩手県花巻市で開催された第3回班会議は、昨年出席できなかった私にとっては初めての本領域班会議であり、普段の学会以上の緊張と興奮を予感しながらの参加となりました。どちらの予感も裏切られることなく、免疫システムの形成と機能に関わる組織環境、免疫器官の連携の分子機構、免疫システムの変容と再構築に向けた技術開発、どの分野においても質の高い研究成果を拝見することができ、また多くの先生方、特に同世代の気鋭の研究者との交流ができたことは、このうえない収穫でした。自分自身の発表では、三年前から進めてきた胸腺皮質上皮細胞に関する研究の成果を述べさせていただきました。高濱先生をはじめ多くの方々に的確なご指摘とご指導をいただき、研究のあるべき方向性を再確認した次第です。胸腺微小環境に関する研究は、今世紀以降、胸腺上皮細胞の機能分子群の同定と解析によって爆発的に進展してきたといえます。今回の班会議でも胸腺に関する多くの発表がありましたが、新たな発見(例えば胸腺プロテアソーム依存的ペプチドの構造的特徴や役割)に胸躍る一方で、古くからの課題(例えばハッサル小体の機能)が未だ解明されていないという事実にも改めて気づかされます。班会議で得た情報とアイデアを活かし、胸腺微小環境の形成機構と機能の解明、そしてその制御をめざして、研究に取り組んでゆきたいと思っております。

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サマースクールという四次元空間 (e10)

伊藤 健(京都大学大学院医学研究科 免疫細胞生物学)

この度初めて、免疫四次元空間ダイナミクスサマースクールに参加させていただきました。免疫四次元空間というのは、免疫・造血細胞そのものだけでなく、分化、応答の「場」を空間的、時間的に解明しようという試みだそうです。サマースクールは、岩手県の陸中宮古で開催され、京都からは飛行機とバスで5時間以上かかる遠方でした。ここでの2泊3日の集中した合宿は、普段の研究室生活から時間的にも空間的にも切り離された、まさに4次元空間でのサマースクールとなりました。
研究の途上である私にとっては、公に研究成果を発表する機会はあまりなく、この若手研究者向けのサマースクールで、未完の部分も含めて発表し、意見交換をする機会が得られたことは非常に有意義であったと思います。さらに、普段はあまり接することのない、数年後の自分の目標となる先生方、あるいは数十年後の目標となるシニアの先生方とお話しする機会もあり、研究に対するモチベーションがさらに高まりました。こういった機会は、サマースクールという貴重な4次元的空間でしか得られることはできず、私自身はまさに「場」に活性化された格好になりました。
私の発表内容については、多くの先生方から質問や指摘、激励をいただきました。サマースクールでの経験を糧として、次は学会や論文といった公の場で、成果を発表できるよう研鑽を積みたいと思います。
サマースクールを企画、運営してくださいました高濱先生をはじめ、関わって下さった多くの先生方に厚く御礼申し上げます。

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第2回 サマースクールに参加して (e11)

宮本 あすか(東海大学・医学部・基礎医学系・分子生命科学領域 亀谷研究室)

岩手県宮古市にて行われた第2回サマースクールに参加させて頂きました。私にとっては初めてのことばかりでしたので参加する前は不安もありましたが、改めて振り返り本当に参加してよかったと達成感を感じています。
基本全員発表で行われた研究発表会では会場の緊張感と質疑応答時の質問の鋭さに最初は圧倒されてしまいました。口頭発表へは敷居が高いとの思いが強く、また自分のグループ外で発表する機会も少ない中で、このような免疫のプロフェッショナルが集まる場所で発表する機会を頂けたことはとても貴重な経験となりました。自分自身の研究発表ではあまりの緊張に反省点ばかりの発表となってしまいましたが、発表後の質疑応答のみならずその後の空き時間等にも多くの先生方に研究に関するご意見・ご質問を頂き、また頑張ったねとお声をかけていただけたこと本当に嬉しかったです。
精一杯の背伸びをした研究発表会に対してシニアトークや討論会では肩の力を抜いてディスカッションに参加することが出来ました。先生方のお心使いにより若手も発言しやすい雰囲気の中、私たちの投げかけた疑義に対しても様々な経験談を交えてお答えいただき、また言葉の節々から溢れる確固たる研究信念にも触れ、身の引き締まる思いで数々のお話を伺いました。様々な立場から出された研究倫理や研究への志に関する意見はどれもが研究に携わる上で基礎となる大事なことばかりであり、非常に学ぶことの多い有意義な時間を過ごさせていただきました。
最後になりましたが、第2回サマースクールの名誉ある若手奨励賞に選んでいただき本当にありがとうございました。知識でも技術でも発想でもまだまだ足りないことばかりですが、私たちの研究がいつの日か癌患者さんの役に立つよう今後も一日一日を大切に精進して行きたいと思います。

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第3回領域班会議と第2回サマースクールに参加して (e12)

大東 いずみ(徳島大学 疾患プロテオゲノム研究センター)

花巻での領域班会議と、陸中宮古でのサマースクールに参加させていただきました。徳島生まれ徳島育ちの私にとって、岩手県はあまりなじみがなく、異国の地に行くような気分でしたが、岩手の広さ、自然の豊かさ、そして震災の悲惨さを感じることができ、班会議やサマースクールの参加も含め、記憶に残る経験ができたと思います。
班会議では、最新の結果、活発な議論を聞くことができ、自分の研究を進める上でも勉強になりました。サマースクールでは、参加者全員が発表をするという、昨年とは違ったスタイルでしたが、たくさんの興味深い話を聞くことができました。私は、領域代表者の高浜先生の研究室員ということもあり、班会議でもサマースクールでも、タイムキーパーを務めましたが、先生方の研究の面白さについ聞き入ってしまい、ベルを鳴らし忘れるのもしばしばあったほどです。
サマースクールでの宮坂先生と高浜先生によるシニアトークでは、今、問題となっている研究データの改ざんと捏造についての講義を聞き、当たり前のことながらも、研究結果に忠実になることの大切さを改めて感じました。
今回の班会議、サマースクールで得た経験を糧に、実りある研究ができるように努力していきたいと思います。

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第2回サマースクール楽しかったです (e13)

池渕 良洋(京都大学医学研究科次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)

今回のサマースクールでは、美しい森林やウミネコの大群、被災地の現状等、様々な体験をさせて頂きありがとうございました。発表会や討論会には半分遊びモードで参加させて頂きましたが、それくらいの気持ちでよかったと考えております。普段学会で会うと身構えてしまう先生方に対して、気軽に質問、議論できる場は非常に快適でした。また、発表されたテーマの大半であるストローマ細胞等に関して、私は全くの素人でしたが、サマースクールが終わる頃には、「エムテック、シーテック」と知ったかぶりできる程度にはなれた気がします。普段興味を持たない分野について大変勉強になり、視野が広がったことに感謝致します。残念な点としては、自由な発表会だと噂に聞いていたのですが、思ったよりも皆さんおかたい発表が多かったなと感じました。次回は、自分が率先して、場の雰囲気を踏み外すような自由な発表をしたいと思っております。最後になりましたが、このたび「班宝」認定を頂き誠にありがとうございました。班宝の名に恥じないように、また、更なる新領域を開発できるような研究者になるために、日々精進していこうと思います。サマースクール運営に関わられた先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。

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サマースクールに参加して (e14)

三田 一帆(北里大学 理学部 生物科学科免疫学講座)

今年度から片桐研究室に所属している北里大学理学部4年生の三田一帆です。この度、岩手県陸中宮古で行われた第2回サマースクールに参加させていただきました。このような研究者が一同に集まる会に初めて参加し、非常に多くの刺激を受け、有意義な時間を過ごすことが出来ました。
研究者として一線で活躍されている方々や先輩大学院生に囲まれ、緊張しながらも自分なりの議論を展開できました。
各先生たちのプレゼンテーションを2日間聞き続けるスケジュールに最初は怯えていましたが、真剣なプレゼンテーションに時間を忘れて勉強することができ、あっという間に終わってしまった印象です。自分自身も15分間の研究発表をさせていただく機会をいただけ、未熟な発表でしたが、私にとって非常に良い経験となりました。
討論会では、どのような考えで研究を進めているか・なぜ研究者になろうと思ったのか、など普段聞くことができない貴重な話が聞け、自分の将来を少し明確に意識することができたと思っています。今回、奨励賞を頂くことができましたが、私は研究を始めたばかりであり受賞するに相応しい存在ではありませんが、受賞できた事を自分自身の自信にし、日々の研究を邁進していきたいと思います。
今後さらに知識や技術を学んでこの領域に貢献できるように研究をしていきたいと思います。そして今回このような貴重な場を設けていただき本当に感謝しております。ありがとうございました。

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班会議に出席して (e15)

澤 新一郎(東京大学大学院医学系研究科 免疫学)

以前高濱先生がブログにも紹介されたことがあるように、ヨーロッパではLymphoid Tissue meetingというものが3-4年毎に開催され、免疫器官形成、特にリンパ組織形成、胸腺上皮細胞分化、ストロマ細胞に関し濃密な議論が行われています。第1回目の会議は2006年にパリで開かれ、若手研究者として片貝智哉先生(当時京大)、鈴木敬一朗先生(当時横浜理研)も参加されていました。両先生とも既にストロマ細胞や腸管免疫で重要なお仕事をされており、まさにこれからLymphoid Tissueの領域に入って行こうとする私には眩しいような存在であったと記憶しています。それから8年後、領域代表の高濱先生をはじめ、名実共にトップレベルの先生方で構成されている本領域に加えていただき、嬉しい限りであります。班会議での深い洞察に満ちた研究成果発表、鋭い質問と建設的なコメントは、私自身の研究にとっても極めて有意義なものでありました。
私が研究対象とする免疫器官形成では、リンパ球の研究が近年急速に進みましたが、ストロマ細胞はまだまだ研究が追いついていません。班員の先生のご協力を仰ぎつつ、この難問に対して真摯に取り組む必要性を痛感した第3回領域班会議でありました。