公募研究概要

リンパ節血管周囲細胞の免疫記憶維持における役割

徳島大学疾患プロテオゲノム研究センター　高田 健介

複雑なリンパ節の内部構造が多様なストローマ細胞の独自の機能に基づいて形成されるという認識が広まる一方、リンパ節ストローマ細胞の詳細な分類は進んでおらず、未知の機能を持った亜集団が数多く残されている可能性が高い。本研究では、これまで充分な解析の進んでいないT細胞領域辺縁部に焦点をあて、血管周囲細胞を中心に構成される微小環境の理解を目指す。また、記憶T細胞の維持における役割を検証する。

本研究では、血管周囲細胞の分子マーカーとして知られているsmooth muscle actin alpha (alphaSMA)のGFPレポーターマウスを用いて、リンパ節ストローマ細胞の解析を行なった。当初の予想に反し、alphaSMAの発現は、血管周囲細胞にとどまらず、リンパ節ストローマ細胞に広く認められた。そこで、従来からリンパ節ストローマ細胞の分類に用いられているマーカーに、さらにalphaSMA-GFPを加えることでリンパ節ストローマ細胞の新たな亜集団の同定を試みた。その結果、これまで解析がほとんど進んでいないgp38-CD31-ストローマ細胞がalphaSMA発現の有無によって機能的に異なる細胞集団に分類されることが明らかとなった。一方、alphaSMAの発現とメモリーT細胞の局在との関連は観察されなかったが、メモリーおよびナイーブCD8T細胞のリンパ節内局在を比較検討する過程で、ナイーブCD8T細胞に特徴的な発現を示すケモカイン受容体を見出し、CD8T細胞の分化と維持における役割を解明する研究課題へと発展している。