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公募研究概要

免疫応答における接着制御分子の役割

北里大学・理学部・免疫学講座 片桐 晃子

免疫システムは、活発な免疫細胞の生体内移動を基盤としており、時間的・空間的に厳密に制御されることによって秩序が維持され、生体防御機能を発揮できる。見張り役の樹状細胞は外敵を捉えると、上皮組織内を遊走しながらリンパ節へ移動する。一方、リンパ球は血流を介して全身移動しているが、リンパ節へ到達すると、高内皮細静脈(HEV)上で停止後、遊走しながらリンパ節内に入る。リンパ節内で両者は、ストローマ細胞上を遊走し、T細胞は特異抗原を提示する樹状細胞に遭遇すると、停止し抗原応答が開始する。このように、免疫システムは免疫の場を構成する上皮細胞や樹状細胞によって、リンパ球の動態が的確に統御されることによって成り立っている。インテグリンを介する接着は、このリンパ球の動態、「停止」と「遊走」の基盤となっている。本研究では、インテグリンLFA-1の接着制御の分子機構を解明し、それが免疫の場を構成する細胞によってどのように操作され、リンパ球の分化と応答が調節されているのか1明らかにする。

LFA-1を介する二つの接着制御機構:親和性上昇(左)と
クラスター形成3,4(右)

本公募研究において、Mst1リン酸化酵素の下流標的基質として、Rab13GEF (GTP/GDP交換因子)であるDENND1Cとアクチン細胞骨格進展因子のVASPを解明し、Mst1とRab13が協調してLFA-1の接着活性を上昇させる機構を明らかにした。また、Rab13欠損マウスを作成し、LFA-1依存性の接着・遊走が低下するとともに、ホーミング能が低下し、リンパ組織が低形成となることを見出し、Rab13がリンパ球動態の制御分子であることをin vivoでも明らかにした。