HOME > 組織と研究者 > 公募研究概要「免疫・造血ニッチとしての脾臓微小環境の形成ならびに再生の制御機構」

公募研究概要

免疫・造血ニッチとしての脾臓微小環境の形成ならびに再生の制御機構

東京理科大学・生命医科学研究所・発生及び老化研究部門 後飯塚 僚

脾臓の微小環境は血行性抗原に対する免疫応答の場として機能する白脾髄および辺縁帯、老化赤血球の破壊や貧血時の髄外造血の場としても重要な機能をもつ赤脾髄、脾臓微小環境の再生に関与する間葉系幹細胞の存在が示唆されている脾膜•脾柱という形態学的にも機能的にも異なる領域から構成されている。脾臓の形成や機能については、造血系•リンパ系細胞側からの解析が進む一方で、これら骨髄由来細胞の機能や分化を支持する脾臓ストローマ•間葉系細胞側からの解析は少なく、未解明な部分が多く残されている。本研究では脾臓の器官発生に必須の転写因子であるTlx1を発現する間葉系細胞の成体脾臓微小環境の形成や機能おける役割について、Tlx1発現細胞の局在や細胞運命追跡が可能な新規レポーターマウスを用いて解析を行い、脾臓における免疫•造血ニッチの形成・再生機構を明らかにする。


脾臓初期発生に必須の転写因子であるTlx1の遺伝子座にCreER-Venusをノックインしたマウスを用いて、Tlx1の発現を指標として脾臓間葉系細胞の起源ならびに機能について解析を行った。その結果、Tlx1発現細胞は脾臓にのみ存在する間葉系細胞であり、線維性細網細胞、濾胞樹状細胞、赤脾髄線維芽細胞などの成熟ストローマ細胞マーカーを発現せず、LTbR、PDGFRa/bならびにCD105陽性の間葉系幹細胞様の性状を示した。また、胎仔期、新生仔期ならびに成体脾臓のTlx1発現細胞の分化運命を追跡した結果、Tlx1発現細胞は、線維性細網細胞、濾胞樹状細胞、辺縁帯細網細胞ならびに赤脾髄線維芽細胞に分化する能力を有することが明らかになった。さらに、ジフテリア毒素誘導的に成体脾臓からTlx1発現細胞を除去した結果、赤脾髄領域の減少ならびに赤芽球・マクロファージの減少が認められ、赤脾髄において赤芽球・マクロファージニッチとして機能することが示唆された。