計画研究概要

リンパ器官形成の分子機構と制御

研究代表者：自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスエンター　高田 慎治
研究分担者：北里大学・医学部　大久保 直

リンパ器官の形成とリンパ器官における「シグナルの場」の理解に向けて、次の２つのテーマに沿った研究を進めている。

（１）多くの組織や器官はさまざまな細胞から構成されており、それらが分泌するシグナル因子により高度の制御された「シグナルの場」を形成している。リンパ器官の「シグナルの場」の実態とそこでの制御機構を理解する上では、ストローマ（間質）細胞の役割を明らかにすると同時に、場の作用を担う分子的実体である各種分泌性シグナル因子の機能を解明していくことが重要であると考えられる。 ここでは、胸腺内で重要な働きをすることが知られている分泌シグナルWntに注目し、（A）Wntを分泌するストローマ細胞の胸腺内での空間配置とWntの拡散様式を明らかにし、それらがT細胞の分化に及ぼす意義を理解すること、（B）Wntの拡散制御に関わる分子機構を生化学的方法論ならびに培養細胞系・脊椎動物の初期発生系などのモデル系を用いた方法論により統合的に解析し、その結果をもとに胸腺におけるWntシグナルの場の形成・制御機構を明らかにすること、の２つの目標に掲げ、 未だ十分に理解の進んでいない分泌シグナルタンパク質の空間制御の実態と意義について理解することを目指す。（担当：高田）

（２）もう一つのテーマは、胸腺原基の発生に関わるしくみの理解である。特に咽頭嚢が形成され、そこから胸腺原基が形成される過程について、 胸腺原基が形成される第３咽頭嚢の発生に必須なアダプター因子であるRipply3に着目し、咽頭弓を構成する細胞群（内胚葉、外胚葉、神経堤細胞等）の動態や機能、およびRipply3と関連して機能する因子の同定や機能解析を通じて、胸腺原基の発生機構を理解することを目指す。（担当：大久保、高田）