計画研究概要

老化と病態によるリンパ器官の撹乱と免疫応答性の変容

京都大学医学研究科教授・免疫学　湊 長博

リンパ器官（組織）は、加齢や悪性腫瘍、感染や自己免疫病などに伴ってしばしば劇的な構築変化を来たし、結果として個体の免疫応答性に大きな影響を与える。申請者は、個体加齢にともなう特徴的な免疫応答性の変容（Immunosenescence）が、ユニークな表面・遺伝子形質および機能を有する新しいCD4⁺Ｔ細胞（senescence -associated T cells, T-sen）の増加に起因する可能性を示し、T-sen細胞は新しい濾胞性胚中心Ｔ細胞であることを見出した。T-sen細胞は加齢のみならず、白血病の浸潤や全身性自己免疫病の発症にともなって急速に増加し、特異免疫機能の減弱や慢性炎症に重要な役割を果たしていることが示唆されている。本研究課題では、老化やガン・持続炎症性攪乱に伴うリンパ組織の構築の変化とT-sen細胞の誘導のメカニズム、T-sen細胞のユニークな機能とその増加に起因する全身性免疫応答性変容の機構について、個体と組織のレベルで解析する。最終的には、老化やガン・慢性病態にともなうリンパ組織構築の修復とリンパ組織の恒常性の回復維持を介して、免疫老化や炎症病態制御のための技術基盤の開発に資することを目標とする。