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公募研究概要

脳梗塞における炎症の沈静化と組織修復メカニズムの解析

慶應義塾大学医学部 七田 崇

脳梗塞は、脳血流の低下・途絶(虚血)によって脳組織が虚血壊死に陥る病態である。壊死組織内では脳細胞、血液細胞による炎症が引き起こされ、組織が浮腫を起こすことによって病態を悪化させる。脳梗塞に対する治療法はまだ十分に確立されておらず、特に炎症の慢性期、沈静期において神経機能を回復させるような治療法に乏しい。本研究では脳虚血モデルマウスを用いて、虚血後の脳組織における炎症メカニズムを免疫学的な視点から解析する。私たちは、虚血壊死に陥った脳細胞から放出され、周囲の炎症細胞をToll様受容体依存的に活性化する脳内因子(内因性組織因子)としてペルオキシレドキシン(Prx)を同定した(1,2)。Prxはマクロファージを活性化してIL-23を産生させ、IL-23はgdT細胞からIL-17を産生誘導することによって炎症を促進して脳梗塞の病態を悪化させる(3,4)。本研究では脳内に放出されたPrxの処理機構の解明に加えて、脳内における組織修復因子に着目した脳虚血後の組織修復メカニズムの解明に挑む。


本研究では、脳梗塞の炎症収束期における修復担当細胞を同定できたため、新たな炎症収束メカニズムの発見につなげることができた。免疫細胞による炎症→修復への移行に関する時系列的な解析によって、この移行に重要なメカニズムの概要を把握したため、脳梗塞の新規治療法の開発に応用を試みている。

  1. Shichita T, Ito M, Yoshimura A.
    Post-ischemic inflammation regulates neural damage and protection.
    Front Cell Neurosci. 8:319 (2014)
  2. Shichita T, Sakaguchi R, Ito M, Kondo T, Yoshimura A.
    Peroxiredoxin triggers cerebral post-ischemic inflammation.
    Inflammation and Regeneration. 33(3):150-155 (2013)