公募研究概要

胸腺上皮細胞の分化・形成に必要な核内酵素の同定とその機能解析

福岡歯科大学機能生物化学講座感染生物学分野　田中 芳彦

胸腺におけるT細胞の分化は、教育の「場」を構築する胸腺上皮細胞によって担われており、自己寛容とT細胞レパトア形成に必須の役割をしている。例えば、胸腺髄質上皮細胞は胸腺細胞の自己反応性T細胞の除去を担っており、組織特異的抗原の発現は核内因子Aireによって制御されている。しかしながら、胸腺髄質上皮細胞の形成過程において、Aireの発現にTRAF6やNF-κBの関与が報告されているが、その詳細なメカニズムについては明らかにされていない。我々は、ノックアウトマウスの解析により、T細胞の発生と胸腺の発育に必須の核内酵素が存在し、それが胸腺上皮細胞において重要な役割を担っていることを見出した。本研究では、胸腺髄質上皮細胞と胸腺皮質上皮細胞を対象にして、これらストローマ細胞の分化・形成における核内酵素の役割を明らかにし、核内酵素が制御するAire遺伝子発現の分子機構を含むシグナル経路の解明を目指す。

二年間、公募班員として参加させていただきました。ノックアウトマウスの解析などによってAireの発現に関わる核内酵素の役割と新しい制御機構を見いだし、研究を前進することができました。幸いにして研究期間内に研究室をもつことができたのは、本領域の温かいご支援があったからに他なりません。また、領域内の他の研究グループと有機的に連携することで、本研究テーマを発展させた新しい研究プロジェクトを開始できたことに心から感謝しております。