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公募研究概要

mTORC1シグナルを介した胸腺環境維持機構の解明

関西医科大学附属生命医学研究所 松田 達志

個体の老化に伴う最も顕著な免疫系の変化の一つは、胸腺を構築する細胞群の減少に伴う胸腺の退縮であり、鳥類や両生類を含む全ての高等動物にプログラムされた現象である。しかし、胸腺退縮の生理的な意義に関しては、適切な老化モデルが少なく、未解明な点が多く残されているのが現状である。例えば、老化に伴う自己免疫応答の亢進や抗腫瘍免疫能の低下といった変化が、T細胞の側の細胞老化に起因するのか、胸腺の退縮によるT細胞応答の質的な変化に起因するのか、もしくはその両者の相乗効果の結果なのか、未だに議論が続いている。一方、老化に伴う胸腺退縮の過程で胸腺環境が受けている制御の詳細については、老化という長期の時間軸に沿った生命現象であることから、これまで十全な解析がなされてきたとは言い難い。研究代表者は、ごく最近、胸腺環境のmTORC1シグナルを誘導的に欠失させることで、胸腺細胞数の急速な減少が引き起こされることを見出した。本研究ではこの系をモデルに、胸腺退縮を引き起こす分子基盤の解明を目指すとともに、その生理的意義の検証を行う。