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公募研究概要
リンパ組織ストローマとしての交感神経の機能
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 鈴木 一博
古くから神経系による免疫応答の制御機構が存在することが指摘されているが、そのメカニズムは現在でもなお十分に理解されていない。我々は、交感神経から分泌されるノルアドレナリンが、リンパ球に発現するβ2アドレナリン受容体を介して特定のケモカイン受容体の反応性を増強することによって、リンパ球のリンパ節からの脱出を抑制することを見出し、交感神経がリンパ球の体内動態の恒常性維持に深く関与していることを明らかにした。本研究では、交感神経をリンパ組織を構成するストローマ細胞として捉え、リンパ組織における交感神経のマッピングを行うと共に、交感神経とリンパ球の相互作用を生で可視化することによって、交感神経によるリンパ球動態制御の実態を明らかにする。これまで生体内における免疫細胞の秩序立った移動と配置は、「走化性因子の場」と「接着分子の場」によって説明されてきたが、本研究を通して免疫細胞動態における秩序形成のメカニズムとして、「神経伝達物質の場」と免疫細胞の対話という新たな仕組みが明らかになると期待される。
- Nakai A, Hayano Y, Furuta F, Noda M, Suzuki K.
Control of lymphocyte egress from lymph nodes through β2-adrenergic receptors.
J Exp Med. 211: 2583-2598 (2014) - Suzuki K, Grigorova I, Phan TG, Kelly LM, Cyster JG.
Visualizing B cell capture of cognate antigen from follicular dendritic cells.
J Exp Med. 206: 1485-1493 (2009) - Suzuki K, Kumanogoh A, Kikutani H.
Semaphorins and their receptors in immune cell interactions.
Nat Immunol. 9: 17-23 (2008) - Suzuki K, Okuno T, Yamamoto M, Pasterkamp RJ, Takegahara N, Takamatsu H, Kitao T, Takagi J, Rennert PD, Kolodkin AL, Kumanogoh A, Kikutani H.
Semaphorin 7A initiates T-cell-mediated inflammatory responses through α1β1 integrin.
Nature 446: 680-684 (2007)