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公募研究概要

時計遺伝子NFIL3によるリンパ組織形成メカニズムの解明

東京理科大学生命医科学研究所 久保 允人

リンパ節やパイエル板はリンパ組織形成を誘導する造血系細胞由来のLymphoid Tissue Inducer (LTi)細胞とリンパ組織形成の場となるストローマ細胞であるLymphoid Tissue Organizer (LTo)細胞との相互作用により形成が開始される。LTi細胞はCommon Lymphoid Progenitor (CLP)からLTi細胞へと分化するが、その分化メカニズムの詳細は未だ不明な点が多く残されている。また、パイエル板は、腸管での免疫応答を制御する器官と考えられているが、その発生過程にどのような制御が関わるのか、リンパ節とどうのように異なるのかなどについてはほとんど分かっていない。
これまでに我々は生体リズムを制御する転写因子E4BP4/NFIL3の免疫システムにおける役割を展開して、T細胞でのサイトカイン制御因子としての役割を明らかにしてきた(Nature Immunology 2011)。一方、E4BP4を欠損したマウスでは、パイエル板の数が著しく減少しているのに対し、他の二次リンパ組織に変化は認められない。また、最近になって、E4BP4欠損マウスは、pre-LTiの形成が不完全であり、そして腸管内に存在する3型自然リンパ球(Innate Lymphoid cell-3;ILC3)が減少傾向あることが報告されるようになった。またE4BP4は、自然リンパ球の分化初期段階にあるcommon helper-like ILC progenitors (CHILP)で働くことで、自然リンパ球の発生初期段階に必要な転写因子Id2分子の転写発現を誘導して、ILC1, ILC2, ILC3すべての自然リンパ球の発生を制御していた(Cell Report, 2015)。これらの報告からE4BP4がpre-LTiの形成・パイエル板の形成・ILCの分化を制御する因子であることは明らかにされたが、リンパ組織形成との関係は未だに明らかにはされていない。現在我々の研究室では、各臓器に分布するILCの分化過程とリンパ組織形成過程を対象にエピゲノム解析を進めることでE4BP4の役割解明を研究している。