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公募研究概要

免疫四次元空間におけるNotchリガンドの役割解明

研究代表者:東海大学医学部 穂積 勝人
連携研究者:理化学研究所統合生命医科学研究センター 茂呂 和世

Notchシグナルは、細胞膜上に発現したNotch分子(哺乳類ではNotch1-4)とそのリガンド(NotchL;哺乳類ではDll1、Dll4、Jag1、Jag2)との細胞間での結合により誘導され、種々の細胞の系列決定や増殖制御に寄与することが知られている。Notchシグナルは、当初、同一の分化ポテンシャルを有する未分化細胞間にて発動し、シグナル受動細胞にてリガンドの発現が抑制されることで、それぞれに異なった細胞系譜へと分化誘導する機構と考えられていた(側方抑制機構)。
我々は、胸腺分化環境を構成する上皮細胞にDll4が特徴的に発現し、胸腺に移行してきた造血未分化細胞上のNotch1を介してNotchシグナルを誘導すること、このシグナルがT細胞分化決定に必須の役割を担うことを示した。これは、Notchリガンドが分化環境因子として機能することを初めて示す結果となった。一方、脾臓偏縁域(MZ)B細胞には、Notch2を介して、脾臓B細胞領域を構成する間葉系細胞(reticular cells)に発現するDll1からNotchシグナルが付与され、MZへの偏在とMZB細胞としての性状が誘導・維持される。また、リンパ節では、リンパ濾胞を構成するFDC、FRCにDll4が発現し、Notch依存的なTfh細胞の抗体産生誘導機能を担保している。こうした免疫組織環境からのNotchLによるリンパ球への働きかけが、その系列決定や機能発現に重要な役割を果たしている。
本領域研究で我々は、免疫空間にて機能することが知られるNotchL:Dll1、Dll4およびNotch1、Notch2の各遺伝子欠損マウス、さらにはDll1、Dll4の誘導型発現マウスを用い、免疫系におけるそれぞれに特有の機能について検証する。胸腺、脾臓、リンパ節に加えて、粘膜関連リンパ組織での機能についても明らかにしたい。また、Notchシグナルへの依存性が報告されている自然リンパ球(Innate Lymphoid Cells、ILCs)分化についても調べ、特に、T細胞分化要因と何が異なるのか、NotchLを含む分化環境の差異に着目し、検証したい。

研究代表者:穂積 勝人


連携研究者:茂呂 和世