図−5

E2Fの活性制御機構と発癌の関係について
1 p16INK4a 遺伝子発現制御機構の解明
2

Epstein-Barr Virus (EBV)によるp16INK4a /RB-pathway遮断の分子メカニズムの解明とその癌治療への応用

4 サイクリンDキナーゼ(CDK4/6)の活性調節機構と発癌制御について
5 発癌ストレスと個体老化の関係について
E2FファミリーはRBファミリー蛋白が結合するターゲット因子であり、細胞周期の進行に重要な役割を果たしている転写因子です。E2F/DP複合体には細胞増殖を促進する作用を有するactivator E2F/DP複合体と、逆に細胞増殖を抑制する作用を有するrepressor E2F/DP複合体が存在します。これまでのDominant negative(dn)体を用いた報告では、activator E2F/DP複合体とrepressor E2F/DP複合体の両方の機能を阻害しても、細胞増殖は停止せず、むしろ、細胞老化などの癌抑制機構が働かなくなり、細胞の増殖性が亢進するとされている。これらの報告からactivator E2F/DP複合体は主に、repressor E2F/DP複合体の機能を阻害するために働いており、repressor E2F/DP複合体が機能していない場合は、activator E2F/DP複合体の機能は細胞増殖には必要ないことを示している。また、このことはE2F/DP複合体の主な機能は増殖を促進することではなく、repressor E2F/DP複合体の機能により増殖を抑制することである可能性を強く示唆している。このことが事実なら、E2F/DP複合体の機能を完全に阻害する薬剤を開発した場合、その薬剤は抗癌作用ではなく、発癌促進作用を与えることになる。しかし、我々の最近の研究結果からdn体の過剰発現ではなく、RNAiで全てのE2F/DP複合体を効率よく阻害すると正常細胞だけでなく、p53 やRBの機能が失活した癌細胞においても瞬時に細胞老化が誘導され細胞の増殖が停止することが明らかになった(Maehara et al., J. Cell Biol., 2005)。今後、RNAiによるE2F活性の抑制を癌治療に応用できないかを検討してゆく予定です(図―5)