月別アーカイブ: 2013年12月

高浜洋介

 

Thymus II @ Porto

クリスマスを控え慌ただしいなか、ポルトガルを訪問する機会を得ました。ポルトガル第二の都市ポルトにラボを構えるNuno Alves博士がオーガナイズする Thymus II @ Porto というワークショップにお声をかけていただいたからです。

Nuno Alves博士は、パリのJim DiSanto博士研究室の出身で、IL-7産生細胞の機能解析に視点を置いて胸腺上皮細胞の研究を進めておられる気鋭の学者です。胸腺上皮細胞のなかでIL-7をたくさん産生する細胞が皮質上皮細胞であることを明らかにしたひとりで、今年になって、IL-7高産生の胸腺皮質上皮細胞に胸腺髄質上皮細胞への分化能が含まれていることを報告しました。時をほぼ同じくして、CD205陽性の胸腺皮質上皮細胞には胸腺髄質上皮細胞への分化能が含まれていることを英国バーミンガム大学のGraham Anderson博士らが報告し、また、胸腺髄質上皮細胞はbeta5t陽性の胸腺上皮前駆細胞に由来するとの私たちの研究室からの報告がなされました。そして、これら3つの論文から、胸腺皮質上皮細胞と胸腺髄質上皮細胞の分岐過程には、皮質上皮細胞に特有の分子を発現する過渡的前駆細胞が存在することが明らかにされました。これらの発見については、3つのグループ共同によって解説論文を報告し、胸腺上皮細胞業界ではすでに引用されはじめています。

こういった経緯をもとに、ポルトガル免疫学会の支援もあって、この度のワークショップが開催されました。故郷ポルトに帰って、地元の若者たちを育てながら特色ある研究を進めるAlves博士、たいへんすばらしいと思いました。

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ポルト名物ドン・ ルイス1世橋を背景に、Alvesラボのみなさんと記念撮影。旧友Anderson博士ともじっくり語り合え、よい旅になりました。

 

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高浜洋介

 

機内インターネットサービス

長距離便の機中、最近利用できるようになったという機内インターネットサービスを試してみましたところ、さっそく事務連絡がたくさん舞い込んできてしまいました。。。

長距離便では、他人に中断されない考えごとや読書を楽しむ者のひとりとしては、このサービスは使わないのがよさそうです。インターネットは中断することにして、しばしシベリア上空から地球のかたちを楽しんでいることにいたしましょう。

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高浜洋介

 

学会における言語と「議論」論

日本免疫学会のセッション完全英語化に関連して、日頃より懇意にしていただいている矢倉英隆先生から、「自分の意見を正確な日本語で発表し、人の意見に対してはっきりとものを言い議論するというところが、われわれ日本人に根付いていないところが一番の問題ではないか」と、含蓄深いコメントをいただいた。

自分の主張をできるかぎり正確に語り、相手の主張に対して明確な意見を表明する、という行為は、議論の基盤である。最初は相手の主張が理解できなかったり、互いの主張が違っていても、あるいは違っているようにみえたとしても、論理的に正確で明確な対話を進めることで論点が整理され、主張を修正しつつ合意をめざす、あるいは、たとえ合意に至らなかったとしても相手の主張を理解しあうことをめざす、という一連の双方向行為が議論である。私自身も議論に際して、「人の意見に対してはっきりとものを言う」という行為の実践を心がけている者のひとりである。しかし、そういった議論の基本行為に対して、相手が感情的になり、時として怒り出すということをしばしば経験してきたのも事実である。しかもこのような応答は日本人との議論で多いように思う。これはどういうわけだろうか。少なくともふたつの原因に思い当たる。

ひとつめは、母国語での議論の場合、互いに言いたいことを言いあう能力が高いため、ともすれば能弁になって言い過ぎを含んでしまったり、あるいは話題を(感情論に)すりかえるテクニックを使うことができる。反対意見に接して感情的になることがあるのは日本人だけではない。母国語で話すことの弊害がこのようなかたちで顕在化してしまうとすると、互いに外国語で議論することは、こういった問題を私たちが避けるために有効というメリットを指摘することもできよう。

しかしもうひとつの原因は、日本人の特徴に直結する。矢倉先生が指摘されているのはこの点であろう。情緒に富み、相手をおもいやり、和を尊ぶ、そしてそれらを相手にも要求するという、日本人のもつすばらしい伝統的特徴である。この感性が豊かな日本人にとって、議論において直言する、とりわけ人の意見に対してはっきりと反対を口にすることは、心情的に容易ではない。また、はっきりとした反論は、相手へのおもいやりに欠ける行為に近似しているとみなされがちで、年長相手には遠慮してしまったり、相手からは基本道徳の欠如した発言とうけとられて怒りを買ったりしてしまう。そして、この問題を私たち日本人が回避するために、言語を日本語から英語にかえることは何の役にも立たない。

科学における議論といういとなみに参画するかぎりは、反対意見の応酬においても論点を見失わずに、明確な着地点に至ることをめざす、議論の効能とその進め方を理解する必要がある。この観点で、上記の日本的美徳は尊重しつつも、学術集会での議論はいかに進めるべきかを改めて検証し考察することは有効である。各研究室を含め教育現場で議論とは何かを教えることは極めて重要である。同時に、学術集会における英語化を進めようとする日本免疫学会においても、このような「議論論」を共有・考察する場を提供することは有用ではないだろうか。

 

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